TIG溶接とMAG溶接の違いとは?特徴と選び方を解説
- 山田工業株式会社
- 2025年10月24日
- 読了時間: 15分

溶接と一口にいっても、TIG溶接とMAG溶接では、仕上がりやコスト、作業性が大きく変わります。どちらを選ぶかで、製品の品質や納期、現場での作業負荷も左右されるため、違いを正しく理解することが大切です。ここでは、TIG溶接とMAG溶接の基本から特徴の比較、用途別の選び方に加え、現場でどう使い分ければよいかをわかりやすく整理します。自社での検討や外注先選びの参考にしてみてください。
1. 溶接方法の基本理解

1.1 溶接とは何か
溶接は、金属同士を強固に接合するための加工方法です。母材を溶かし、場合によっては溶加材(溶接ワイヤや棒)を加えて一体化させることで、機械的に高い強度を持つ接合部を作ります。
大きく分けると、アーク放電の熱を利用するアーク溶接、ガス炎を使うガス溶接、抵抗熱を利用する抵抗溶接などがあります。TIG溶接とMAG溶接はいずれもアーク溶接の一種で、電極と母材の間に発生するアーク熱で金属を溶かす方法です。
アーク溶接では、溶融部が空気中の酸素や窒素と反応してしまうと、気孔や割れ、強度低下などの欠陥が生じます。そこで、保護ガスやフラックスなどを用いて、溶融金属を大気から遮断しながら作業します。TIG溶接とMAG溶接の違いの多くは、この「保護方法」と「電極の扱い方」に起因すると考えると整理しやすくなります。
1.2 TIG溶接の基本概要
TIG溶接は、「Tungsten Inert Gas」の略称で、日本語では「不活性ガス・タングステンアーク溶接」と呼ばれます。タングステン電極と母材の間にアークを発生させ、アルゴンなどの不活性ガスで溶融部を保護しながら溶接する方法です。
タングステン電極は溶けない「非消耗電極」のため、アークを安定して維持しやすく、必要に応じて別途溶加材を手で供給します。アーク径が細く、入熱を比較的コントロールしやすいことから、薄板や小物部品、装飾性が求められる部位の溶接に向いています。
TIG溶接は、溶接ビードがきれいで歪みも抑えやすく、ステンレスやアルミなどの非鉄金属の溶接にも広く使われるのが大きな特徴です。その反面、作業スピードはMAG溶接に比べて遅くなりやすく、一定の熟練も必要になります。
1.3 MAG溶接の基本概要
MAG溶接は、「Metal Active Gas」の略で、炭酸ガスや炭酸ガスとアルゴンの混合ガスといった「アクティブガス」を使う溶接方法です。ワイヤが電極兼溶加材として自動的に送給される「半自動溶接」に分類されます。
ワイヤ先端と母材の間でアークを発生させ、その熱で母材とワイヤを同時に溶かしながら溶接を進めます。ガスシールドによって溶融部を保護するものの、使用するガスが活性ガスであるため、アークの特性やスパッタの発生に影響しやすくなります。
MAG溶接は、作業スピードが速く、一定品質での連続溶接や量産に向いているのが強みです。鉄鋼材料、とくに軟鋼や高張力鋼などの溶接に多用され、建築や産業機械、自動車関連など、幅広い分野で採用されています。
2. TIG溶接とMAG溶接の技術的特徴の違い

2.1 TIG溶接の技術的特性とメリット
TIG溶接は、不活性ガスによるシールドと非消耗電極の組み合わせにより、アークが安定しやすく、溶融池を目視しながらきめ細かな制御が行えるのが特徴です。アーク熱が比較的集中し、ビード形状をコントロールしやすいため、薄板や細かな形状の溶接で威力を発揮します。
メリットとしてまず挙げられるのが、仕上がり品質の高さです。ビード表面が滑らかで、スパッタや溶接ヒュームの発生が少ないため、後処理や研磨にかかる手間を抑えられます。特に、外観品質が重視されるステンレスの手すりや装飾金物、食品・医療関連の装置部品などでは、TIG溶接が好まれることが多くなります。
また、アルミや銅合金など、酸化被膜ができやすい非鉄金属の溶接にも適しています。交流TIGなどを組み合わせることで、酸化皮膜を除去しながら安定した溶接が行えます。入熱管理がしやすいため、熱による歪みや焼け色を抑えたい場面でも有利です。
一方で、手動TIGの場合は、トーチと溶加棒の両方を操作する必要があり、作業者の技量が品質に直結します。溶接速度もMAG溶接ほど速くないため、長いビードや大量生産にはあまり向きません。ただし、その分だけ繊細な仕上がりが得られるため、高品質を優先したいときに選ばれる溶接方法といえます。
2.2 MAG溶接の技術的特性とメリット
MAG溶接は、ワイヤ送給装置によって溶接ワイヤが自動で送り出されるため、一定条件下では安定したビードを効率よく形成できます。電源とワイヤ、シールドガスの条件を適切に設定することで、溶け込みやビード幅、脚長なども再現性よく得られるのが特長です。
最も大きなメリットは、作業速度と生産性の高さです。MAG溶接は、長い溶接線や厚板の連続溶接、大量生産品に適しており、人手に対する施工量を大きく高めやすい方法といえます。一定の教育を行えば、比較的短期間で実務に投入しやすいのも利点です。
また、ワイヤ径やガス組成、溶接条件を変えることで、スパッタ量を減らしたり、立向や上向などの姿勢溶接に対応したりと、用途に応じた最適化が行いやすい面もあります。建築鉄骨や車両・産業機械のフレームなど、構造部材の溶接ではMAG溶接が広く使われています。
ただし、アクティブガスを用いる関係で、TIG溶接ほどビード外観は整わないことがあり、スパッタの除去やビード研磨などの仕上げ処理が必要になるケースもあります。さらに、薄板での低入熱溶接や、外観重視・美観重視の溶接では、条件設定や作業者の工夫が求められます。
2.3 TIG溶接とMAG溶接の適用範囲
TIG溶接とMAG溶接は、それぞれ得意とする材質・板厚・用途が異なります。一般的には、次のようなイメージで使い分けられています。
TIG溶接 ステンレスやアルミ、チタンなどの非鉄金属、薄板・小物部品、外観品質を重視する箇所
MAG溶接 軟鋼や高張力鋼などの鉄鋼材料、板厚のある部材、長い溶接線や量産品
TIG溶接は、板厚の薄い部品や、熱による変形を避けたい精密部品では有効な選択肢となります。一方でMAG溶接は、構造物やフレーム類の溶接、建築・橋梁・製缶などの分野で主力となる場面が多く見られます。
適用範囲を整理すると、「高品質・美観・薄板」はTIG、「スピード・生産性・厚板」はMAGという棲み分けになります。ただし、実際の現場では、同じ製品の中でも部位ごとにTIGとMAGを使い分けることも少なくありません。製品の要求品質、使用環境、コスト条件などを総合的に見て選定していくことが重要です。
3. TIG溶接とMAG溶接の主な違い

3.1 保護ガスの違い
TIG溶接とMAG溶接の大きな違いの一つが、使用する保護ガスです。TIG溶接では、アルゴンやヘリウムなどの「不活性ガス」が使われます。これらのガスは化学反応性が低く、溶融金属やアークに影響を与えにくいため、安定したアークときれいなビード形成に寄与します。
一方MAG溶接では、炭酸ガスや炭酸ガスとアルゴンの混合ガスといった「活性ガス」を使用します。これらのガスは、アーク中で分解・反応し、溶融金属に一定の影響を及ぼします。その結果、溶け込みが深くなりやすい一方、スパッタが発生しやすくなるなどの特徴が現れます。
保護ガスの違いは、アークの安定性・ビード外観・スパッタ量・溶け込み特性など、多くの要素に直結するため、TIGとMAGの性格を分ける根本要因といえます。現場では、ガスシリンダーや流量計の管理も必要になり、ガスコストと得られる品質のバランスを意識した選定が欠かせません。
3.2 使用電極の違い
もう一つの大きな違いは、電極の扱いです。TIG溶接はタングステン電極を用いる非消耗電極方式であり、電極自体は基本的に溶けません。必要に応じて別途溶加棒を供給しながら溶接するため、アークと溶融池を目視で確認しつつ繊細なコントロールができます。
MAG溶接では、ワイヤが「消耗電極」として機能します。ワイヤ先端がアーク熱で溶けながら、溶加材として母材に供給されていきます。ワイヤ送給速度や電流・電圧を調整することで、溶融金属の移行状態やビード形状を制御します。
この違いにより、TIG溶接は溶接者の手さばきが品質を左右しやすく、自由度が高い反面、習熟には時間がかかります。MAG溶接は、条件が決まれば一定品質で連続溶接しやすく、自動化やロボット溶接との相性も良いという特徴を持ちます。設備投資や工程設計を考える際にも、この電極方式の違いは重要なポイントになります。
3.3 溶接速度と作業性の違い
TIG溶接とMAG溶接では、溶接速度や作業性にも明確な差があります。一般的に、TIG溶接はMAG溶接と比べて溶接速度が遅くなりがちです。片手でトーチ、もう片方の手で溶加棒を操作する必要があるうえ、細かなコントロールを優先する場面が多いため、どうしても進行スピードは抑えめになります。
その代わり、狭い箇所や複雑な形状、薄板の端部など、慎重な作業が求められる場所でも対応しやすい利点があります。姿勢溶接にも対応可能ですが、作業者の熟練度がより重要になります。
MAG溶接では、ワイヤ送給が自動で行われるため、比較的スムーズに溶接線を進められます。同じ長さを溶接する場合、MAG溶接の方が短時間で完了しやすく、生産性の面で優位に立ちやすいです。半自動溶接機を用いることで、一定の条件下で安定した溶接を高いスループットで行えます。
ただし、作業性の良さは条件が整っている場合に限られることもあります。風のある屋外や狭隘部、仮付けが不十分な状態などでは、ビード乱れや欠陥のリスクも高まります。TIG・MAGそれぞれの特性を理解し、現場状況と要求品質を踏まえて使い分けることが、トラブルを防ぐうえで重要になります。
4. TIG溶接とMAG溶接の選び方の違い
4.1 溶接する金属の種類による選択
溶接方法を選ぶうえで、溶接対象となる金属の種類は最も重要な判断材料です。鉄鋼材料、ステンレス、アルミなど、それぞれに適した溶接法があります。
鉄鋼材料、とくに軟鋼や高張力鋼など、一般的な構造用鋼ではMAG溶接が広く採用されています。溶け込みが深く得られやすく、溶接金属の靭性や強度も確保しやすいためです。長尺溶接や厚板、構造物などでは、MAG溶接が主力となるケースが多くなります。
ステンレス鋼については、TIG溶接・MAG溶接のどちらも適用可能です。外観品質や仕上がりを重視する場合や、薄板・小物部品ではTIG溶接が選ばれやすく、量産品や厚板、構造用途ではMAG溶接が用いられることが多いという傾向があります。
アルミやアルミ合金は、TIG溶接が多用されます。アルミは熱伝導率が高く、酸化皮膜ができやすいため、TIG溶接のきめ細かな入熱制御と不活性ガスシールドが適しています。銅やチタンなども同様に、TIG溶接が検討されることが多い金属です。
このように、まずは「どの材質を、どの板厚で溶接するのか」を整理し、そのうえでTIGとMAGのどちらをベースに採用するかを考えると、選択を誤りにくくなります。
4.2 仕上がりの品質と用途による選び方
溶接の目的や、製品として求められる品質・外観も、方法選定を左右する重要な要因です。同じ材質であっても、用途によって適切な溶接法は変わります。
例えば、目に触れる位置に取り付けられる建築金物や、デザイン性の高いモニュメント、装飾性を重視した製品などでは、溶接ビードの美しさや熱影響部の焼け色の少なさが重要視されます。こうした場合は、TIG溶接を用いることで、研磨や仕上げの工数を抑えつつ、高い外観品質を確保しやすくなります。
一方、内部構造部品やフレームなど、外観よりも強度と生産性が重視される部位では、MAG溶接が有利に働きます。多少スパッタが出ても後から隠れてしまう部分であれば、速度とコスト面のメリットを優先する合理的な選択が可能です。
また、溶接後の加工や表面処理との相性も考える必要があります。たとえば、溶接後に研磨やヘアライン仕上げを行う場合、TIG溶接でビードを整えておくと、後加工がスムーズになります。塗装やメッキを前提とするなら、MAG溶接で強度と生産性を確保し、必要な範囲だけ仕上げを施すやり方もあります。
用途ごとの要求性能を整理し、「見える部分かどうか」「意匠性が必要か」「どの程度の強度が必要か」を踏まえたうえで、TIG・MAGのどちらを主とするかを決めることが選定のポイントになります。
4.3 コストと効率を考慮した選択
溶接方法の違いは、材料費・工賃・工程数といったコストにも直結します。溶接の工数や作業時間、使用するガスやワイヤの種類によって、トータルのコスト構造が変わってきます。
一般に、MAG溶接は生産性が高く、長い溶接線や大量生産に向いているため、1個あたりのコストを抑えたい場合や、短納期で多数の製品を製作したい場合に優位です。ワイヤや炭酸ガスなどのランニングコストはかかりますが、作業スピードでそれを上回る効率性を発揮しやすくなります。
一方、TIG溶接は作業時間が長くなりやすく、熟練作業者による対応が必要になるため、時間当たりの工賃としては高くなりがちです。ただし、スパッタが少なく仕上げ工数も削減しやすいことから、後工程まで含めたコストで見ると、TIGのほうが有利になるケースもあります。
また、不良発生率や手直しの有無も見逃せないポイントです。例えば、外観不良が許されない製品をMAG溶接で無理に量産すると、後から研磨や再溶接が増え、結果としてコストが膨らむことがあります。逆に、必要以上に全てをTIG溶接で仕上げると、納期や価格面で競争力が落ちることもあります。
このため、「どこまでの品質をどのコストで実現したいのか」を明確にしつつ、TIGとMAGを組み合わせて使う発想が大切になります。設計段階や見積もりのタイミングで、溶接方法を織り込んだコスト検討を行うことで、無理のない品質・価格バランスを実現しやすくなります。
5. 山田工業株式会社のTIG溶接とMAG溶接技術
5.1 多様な金属材料への対応力
山田工業株式会社では、TIG溶接とMAG溶接の双方に対応し、アルミ、ステンレス、スチールといった多様な金属材料を扱っています。製缶溶接から精密板金まで幅広い経験を持ち、材質ごとに最適な溶接方法を選択するノウハウを蓄積しています。
特に、アルミやステンレスのように、材料特性や熱影響を慎重に考慮すべき金属に対し、TIG溶接による高品質な仕上がりと、MAG溶接による生産性の高い施工を使い分けることで、用途に応じた最適な提案が可能です。薄板から厚板、小物部品から大物構造物まで、材質と板厚に応じた組み合わせを検討し、必要な品質レベルを満たす溶接方法を選定します。
また、レーザー加工や曲げ加工との組み合わせも踏まえた溶接設計を行うことで、後工程を含めた精度や外観を確保しつつ、過剰なコストをかけないバランスのよい製作を目指しています。
5.2 高品質と短納期の両立
山田工業株式会社の強みのひとつが、高品質と短納期の両立です。設計図作成から、3次元レーザーカット、曲げ加工、溶接、仕上げまでの一連の流れを社内で完結できる体制を整え、工程間のロスを最小限に抑えています。
TIG溶接では、ステンレスやアルミなどの精密部品や意匠性の高い製品に対し、ビードの美しさと歪みの少ない仕上がりを追求しています。MAG溶接では、構造部材や量産品などに対し、効率のよい溶接条件を設定し、安定した品質を保ちながらリードタイムの短縮を図っています。
ファイバーレーザー加工機やファイバー溶接機などの設備と、少数精鋭によるスムーズな意思決定・段取りの組み合わせにより、短納期案件にも柔軟に対応できる体制を構築しています。単なるスピード重視ではなく、必要な品質を維持したうえで工程を最適化し、お客様の求める納期に応えていくことを重視しています。
5.3 お客様ニーズに応じた柔軟な対応
山田工業株式会社では、設計段階から試作・量産まで、お客様ごとの事情に合わせた柔軟な対応を行っています。金属の選定や板厚、必要な強度や外観、現場での取付け方法など、さまざまな条件を踏まえたうえで、TIG溶接とMAG溶接のどちらを主体とするかを検討します。
例えば、同じ製品の中でも、外観が目立つ部分にはTIG溶接を、内部構造や見えない部分にはMAG溶接を採用するなど、部位ごとに溶接方法を変える提案も行っています。これにより、品質とコストのバランスを最適化し、お客様の用途やご予算に合った現実的な仕様を一緒に組み立てていくことが可能です。
また、小ロットの試作段階でTIG溶接により形状や強度を検証し、その結果をもとに量産工程ではMAG溶接へ切り替えるといった、工程設計を見据えた提案も行っています。こうした柔軟さが、幅広い業種のお客様からの信頼につながっています。
6. 金属加工でお困りなら山田工業株式会社にご相談を
TIG溶接とMAG溶接は、それぞれに得意分野と役割があり、どちらが優れているというものではありません。材質や板厚、必要な強度や外観、納期やコストなどを踏まえて、適切に使い分けることが重要です。高品質な仕上がりが求められる箇所にはTIG溶接を、スピードと生産性が重視される箇所にはMAG溶接を採用し、両者を組み合わせることで、全体としてバランスの良い製品づくりにつなげられます。
山田工業株式会社では、アルミ・ステンレス・スチールを中心に、製缶溶接と板金加工を組み合わせた金属加工に対応しており、TIG溶接とMAG溶接の特性を踏まえた最適な提案を行っています。とくに次のような場面では、早い段階で相談しておくと検討がスムーズです。
どの溶接方法を採用すべきか判断に迷っている
品質・コスト・納期のバランスを見直したい
新製品や試作品で溶接構造を一から検討したい
溶接方法の選定で迷っている場合や、品質・コスト・納期のバランスにお悩みの際には、条件やご要望を共有いただくことで、より現場に即した形での検討が可能です。金属加工や溶接に関わる課題があれば、一人で抱え込まず、専門的な知見を持つパートナーに相談することで、解決への道筋が見えてきます。山田工業株式会社は、そのような相談窓口として、TIG溶接・MAG溶接を含む金属加工全般のサポートを行っています。
TIG溶接とMAG溶接の違いもカバーする山田工業の専門サービス
山田工業株式会社は、福井県鯖江市に拠点を置く金属加工の専門企業です。溶接から板金加工まで、高品質かつ迅速なサービスで、お客様の多様なニーズに対応します。LINEを活用した24時間対応サポートも安心です。

コメント